24時間換気システムが義務化され、室内の空気環境は大きく改善されました。
しかし、せっかくお気に入りの芳香剤やルームフレグランスを置いても、その香りがすぐに薄れてしまうと感じる方も少なくないでしょう。
せっかくの香りが長続きしないのは、快適な室内環境を保つための換気システムが、同時に香りの成分をも効率的に運び去ってしまうためです。
今回は、その理由を詳しく解説するとともに、換気システムと共存しながら、空間に心地よい香りを漂わせるための実践的な方法を探っていきます。
24時間換気で芳香剤の臭いが消える理由
排気ファンが香りを強制排出する
24時間換気システムは、室内の空気を常時入れ替えることで、シックハウス症候群の原因となる有害物質の濃度を低減し、カビや結露の発生を抑制するなど、快適で健康的な住環境を維持するために不可欠な設備です。
このシステムの中心的な役割を担っているのが排気ファンであり、室内の汚れた空気や生活臭、そして残念ながら芳香剤やルームフレグランスが放つ香りの成分をも、強制的に室外へと排出する働きを持っています。
給気口から新鮮な空気が供給される一方で、排気口から常に空気が吸い出されるため、空間に広がった香りの分子も、気づかないうちに換気経路を通じて外部へと運ばれてしまうのです。
常に空気が入れ替わり香りが留まらない
24時間換気システムのもう一つの特徴は、その名の通り、24時間絶え間なく空気が循環し続けている点にあります。
これは、たとえ一時的に芳香剤の香りが空間に広がったとしても、新鮮な外気との入れ替わりによって、その香りの濃度が急速に低下してしまうことを意味します。
室内の空気は常に給気口から取り込まれ、排気ファンによって排出されるため、香りの分子が一定時間、室内に留まることが難しくなります。
結果として、せっかく設置した芳香剤の香りは、本来意図された持続性を発揮できず、常に薄い状態、あるいはほとんど感じられない状態になりがちなのです。
換気中でも香りを保つ現実的な方法はあるか
換気口から離れた場所に設置する
換気システム稼働中でも香りをできるだけ長く楽しむための最も基本的な対策は、芳香剤やフレグランスの設置場所を工夫することです。
具体的には、排気口の真上やその周辺は避け、空気の流れが比較的緩やかな場所、例えば部屋の奥まった場所や、家具の陰、あるいはクローゼットの中などが効果的と考えられます。
給気口からの外気の流入や、排気ファンによる空気の吸い出しの影響を受けにくい位置を選ぶことで、香りの成分が拡散・排出される速度をわずかに遅らせ、体感できる香りの持続時間を延ばすことが期待できます。
ただし、換気システム全体の空気循環を完全に妨げることはできないため、限定的な効果となります。
香りの強い製品を選ぶ
換気による空気の入れ替わりという逆風の中でも、香りをしっかりと空間に届け、感じてもらうためには、より拡散力や持続性の高い芳香剤製品を選択することが有効な手段となります。
例えば、揮発性が穏やかでゆっくりと香りが広がるジェルタイプや、オイルが徐々に染み込むリードディフューザー、あるいは香りの粒子を多く含むタイプの製品などが考えられます。
これらの製品は、空気の流れがある程度あっても、その存在感を示しやすい傾向があります。
ただし、香りの強すぎる製品は、換気システムが停止している際などに不快感を与える可能性もあるため、ご自身の好みや使用する空間の広さに合わせて、適切な強さのものを選ぶことが重要です。
香りの強さを調整できる機器を活用する
近年では、スマート機能やタイマー機能などを搭載し、香りの拡散量を細かく設定できるタイプのフレグランス機器が数多く登場しています。
これらの機器を活用することで、24時間換気システムによる空気の排出に効果的に対抗することが可能になります。
例えば、日中の活動時間帯や来客時など、香りを強く感じさせたい時間帯には拡散レベルを高く設定し、就寝時など穏やかな香りが望ましい時間帯にはレベルを下げる、といった使い分けができます。
また、タイマー機能を活用して、換気が活発になる時間帯に合わせて香りの拡散を一時停止させるなどの応用も考えられ、より柔軟に香りの空間演出を楽しむことができます。
まとめ
24時間換気システムは、室内の空気質を良好に保つために不可欠ですが、その換気機能ゆえに芳香剤やルームフレグランスの香りが持続しにくいという課題も生じます。
工夫を取り入れ、快適な住空間と理想の香り、その両立を目指してみてはいかがでしょうか。
