住宅の省エネルギー性能は、快適な居住環境の実現とともに、地球環境への負荷低減においても極めて重要な要素となっています。
特に、建築物省エネ法において基準となっている平成28年省エネ基準に基づく一次エネルギー消費量の正確な算定は、住宅の性能を評価し、より良い設計へと繋げるための基盤となります。
今回は、この基準で定められた一次エネルギー消費量の計算方法を詳細に解説し、その算定手順から、外皮性能、設備機器、再生可能エネルギーといった各要素の具体的な算出方法、さらには地域区分や日射熱取得などの補正要素までを掘り下げていきます。
平成28年省エネ基準における一次エネルギー消費量の計算方法
一次エネルギー消費量の算定手順と基本構造
平成28年省エネ基準における一次エネルギー消費量の算定は、省エネルギー性能の評価指標である「一次エネルギー消費量」を、建築物省エネ法で定められた計算方法に基づき定量的に算出するプロセスであり、住宅のエネルギー消費性能を客観的に評価するための根幹をなします。
この算定は、概ね「基準一次エネルギー消費量」と「設計一次エネルギー消費量」の二つの値を用いて行われ、設計された住宅の一次エネルギー消費量が、地域や規模に応じた基準値を下回っているか否かを判定します。
算定手順の基本構造としては、まず、住宅の断熱性および日射遮蔽性を示す「外皮性能」に関する要素、次に、冷房・暖房・換気・照明・給湯といった住宅の主要な「設備機器」のエネルギー消費性能、そして、太陽光発電システムなどの「再生可能エネルギー」による自家消費分をそれぞれ算出し、これらの合計値から、地域特性や日射熱取得などの「補正要素」を考慮して、最終的な一次エネルギー消費量を導き出すという流れが採用されています。
外皮性能設備機器再生可能エネルギーの算定
一次エネルギー消費量の算定における「外皮性能」の評価は、住宅の断熱性能を示すUA値(外皮平均熱貫流率)や、日射遮蔽性能を示すηAC値(冷房期の平均日射熱取得率)といった指標に基づいて行われ、これらの値が小さいほど、断熱性・遮蔽性が高いと評価され、冷暖房負荷の低減に寄与します。
次に、「設備機器」の算定では、冷房・暖房機器のCOP(成績係数)やエネルギー消費効率、給湯器の熱効率、照明の消費電力など、各機器の性能仕様に基づき、年間のエネルギー消費量を算出します。
さらに、屋根などに設置された太陽光発電システムが発電した電気のうち、住宅内で消費される「再生可能エネルギー」による創エネルギー量は、一次エネルギー消費量から差し引かれる形で算入され、これは実質的なエネルギー消費量を低減させる効果を持ちます。
これらの各要素の算定値が、一次エネルギー消費量全体の構成要素として積み上げられていきます。
地域区分や日射熱取得など補正要素の計算
一次エネルギー消費量の算定においては、住宅が立地する地域ごとの気候条件や日射量の影響を考慮するための「補正要素」の計算が不可欠となります。
日本国内は、原則としてI地域からVII地域までの8つの「地域区分」に細分化されており、地域区分ごとに外気温度や積雪量、日射量が異なってくるため、これらを反映させた補正係数が算定式に適用されます。
特に、「日射熱取得」は、夏季の冷房負荷や冬季の暖房負荷に大きく影響するため、窓の向きや面積、庇の有無、日射遮蔽係数などを考慮して、建物全体での日射熱取得量を算定し、冷房負荷の算定において適切に反映させることが求められます。
これらの地域特性や日射条件といった外部要因を補正することで、より実態に即した精緻な一次エネルギー消費量の評価が可能となります。
平成28年省エネ基準の適用と計算における注意点
基準の適用範囲と最新の適用状況
平成28年省エネ基準(建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律施行令第4条に規定される基準)は、主に新築の戸建住宅や小規模な非住宅建築物における建築物のエネルギー消費性能の最低基準として定められており、一定規模以上の建築物には適合義務が課されています。
近年では、建築物省エネ法が改正され、2025年(令和7年)4月からは、戸建住宅を含む全ての新築建築物に対して省エネ基準への適合が義務化される予定であり、この基準の適用範囲はますます拡大していく傾向にあります。
そのため、現行の平成28年基準の理解に加え、今後の法改正動向や、それに伴う算定方法の変更、評価ツールの更新情報などを継続的に把握しておくことが、実務において極めて重要となります。
算定方法の変更履歴と計算プログラムの関連性
省エネ基準は、エネルギー技術の進歩や社会情勢の変化に応じて、度々見直しが行われてまいりました。
平成28年基準は、それ以前の基準と比較して、一次エネルギー消費量という統一的な指標を導入し、より多角的に建物の省エネ性能を評価できるように算定方法が刷新されました。
特に、外皮性能の評価方法や、設備機器のエネルギー消費量の算定方法に細かな変更が加えられており、これらの変更点は、計算プログラムのバージョンアップにも直接的に反映されています。
現在、国土交通省が提供する「建築物省エネ法計算支援ツール」をはじめとする各種計算プログラムは、この平成28年基準に基づいた算定を効率的に行うための必須ツールとなっていますが、プログラムのバージョンが異なると、算定結果に差異が生じる可能性も否定できません。
したがって、最新の基準内容と、使用するプログラムのバージョンとの整合性を常に確認し、最新版を利用することが推奨されます。
計算結果の解釈と業務への適用
算定された設計一次エネルギー消費量が、地域区分ごとに定められた基準一次エネルギー消費量を下回っていることを確認することで、その住宅が平成28年省エネ基準に適合していると判断されます。
この計算結果は、単に基準への適合性を確認するだけでなく、設計段階における省エネ性能の評価や、さらなる性能向上のための具体的な改善点の特定に役立ちます。
例えば、計算結果から特定の設備機器のエネルギー消費量が突出していることが判明した場合、より高効率な機器への変更を検討したり、外皮性能の評価値が基準値に近い場合は、断熱材の追加や窓の性能向上といった設計変更の必要性を検討したりすることが可能です。
このように、計算結果を詳細に分析し、その意味するところを正確に理解することは、住宅の付加価値を高め、施主への信頼性を向上させるための重要なプロセスとなります。
まとめ
平成28年省エネ基準における一次エネルギー消費量の計算は、住宅の省エネルギー性能を定量的に評価する上で不可欠なプロセスです。
これらの知識を深めることは、より高性能で快適な住宅設計を実現し、持続可能な社会の実現に貢献するための第一歩となるでしょう。

